「暗号資産」と「仮想通貨」。ニュースやインターネットでよく目にするこれらの言葉ですが、「何が違うの?」と疑問に思う方もいるかもしれません。結論から言うと、この二つの言葉に明確な違いはありません。単に呼び方が異なるだけで、どちらも同じ「デジタルデータでできた資産」を意味しています。この記事では、なぜ呼び方が複数存在するのか、そしてそれぞれの言葉が持つ背景について詳しく解説していきます。暗号資産(仮想通貨)の世界への理解を深めることで、今後の情報収集や投資判断に役立てていただければ幸いです。
暗号資産と仮想通貨は、同じものを指す
「暗号資産」と「仮想通貨」は、根本的には同じものを指しています。どちらもブロックチェーン技術などの暗号化技術を用いて取引の安全性を確保しているデジタル資産です。しかし、なぜ二つの呼び方が存在するのでしょうか?それは、時代や状況によって呼び方が変化してきたためです。もともと広く使われていた「仮想通貨」という呼び方は、法定通貨(日本円や米ドルなど)と混同される可能性がありました。そこで、より正確にその性質を表す言葉として「暗号資産」という呼び方が用いられるようになったのです。現在では、金融庁をはじめとする公的機関も「暗号資産」という呼称を使用しており、国際的にもこの呼び方が一般的になっています。
英語での呼称
英語圏では、暗号資産は主に「Crypto asset(クリプトアセット)」と呼ばれています。以前は「Virtual Currency(バーチャルカレンシー)」や「Cryptocurrency(クリプトカレンシー)」という呼び方も使われていましたが、近年では「Crypto asset」が主流となっています。これは、国際的な議論や規制の場において、より正確かつ包括的な表現として「Crypto asset」が用いられるようになったためです。このように、言語によって呼び方は異なりますが、いずれもデジタル化された資産であり、暗号技術によって安全性が確保されているという点は共通しています。以下に各言語での呼称をまとめます。
言語 | 呼称 |
---|---|
日本語 | 暗号資産、仮想通貨 |
英語 | Crypto asset、Virtual Currency等 |
2020年5月1日に「仮想通貨」から「暗号資産」への名称変更となった
日本では、2020年5月1日に金融庁が「仮想通貨」の呼称を「暗号資産」に正式に変更しました。これは、国際的な動向に合わせたものであり、また、法定通貨との混同を避ける目的もありました。この変更により、暗号資産は単なる「仮想の通貨」ではなく、投資対象としての側面も持つ「資産」として明確に位置づけられることとなりました。この変更は、暗号資産に対する社会的な認識を変化させる大きなきっかけとなりました。
名称変更がされた背景
名称変更の背景には、2018年のG20サミットで「暗号資産(クリプトアセット)」という用語が用いられたことが大きく影響しています。これは、国際的な議論において、暗号資産を法定通貨とは異なる性質を持つものとして区別する必要性が認識されたことを示しています。その後、金融庁もこの流れを受け、2018年12月に「仮想通貨」から「暗号資産」への呼称変更を発表し、2020年5月1日に正式に施行されました。この変更は、暗号資産市場の健全な発展を促進し、投資家保護の観点からも重要な意味を持っています。
暗号資産が「通貨」として使用されていない
「暗号資産」という名前にもかかわらず、日常生活で法定通貨のように広く使用されているわけではありません。現状では、投資対象としての側面や、特定のコミュニティ内での決済手段として利用されるケースが多いです。しかし、技術の進歩や社会的な受容の変化によっては、将来的に日常生活でより広く利用される可能性も否定できません。重要なのは、暗号資産は法定通貨とは異なる性質を持つデジタル資産であるという点を理解することです。
暗号資産の法的な定義
日本では、資金決済に関する法律(資金決済法)において、暗号資産は以下のように定義されています。
- 物品を購入もしくは借り上げ、または役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入および売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限る。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
- 前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
この定義からもわかるように、暗号資産は単なる「通貨」ではなく、財産的価値を持つデジタル資産として法的に位置づけられています。